前回、カイジは保険証を確保するために実家行きを決意しました。
それから・・・3日が経過。
つまりカイジたちが逃亡を始めて9日目、夜の帳が下りた街には、一台のクルマが停まっていました。
遠藤の指示により、ここ滝川西団地に駐車すること8日目。
その31号棟の302号室こそ、他でもないカイジの実家です。
つまり、帝愛はリスクを承知で張り込みを継続していました。カイジの読みは半ば外れた形ですね。
ところで・・・滝川という地名は恐らくはカイジの出身地という事になりますが、現実の市では北海道、町では愛知や三重、京都にも存在します。
あくまで架空の地名という設定の可能性も強いですが、即しているとするならカイジには関西圏のイメージは無いので北海道が有力でしょうか。
ただ赤木も然り、生い立ちは謎に包まれている方が想像の余地があるので漫画的に魅力が増しますね。
ここでも不透明としたのは個人的には正解だと思います。
それはさておき・・・帝愛側としては流石に張り続けて丸8日、その間に全くトラブルが無かったわけではありません。
人とクルマを変えていたとはいえ、一度は住人からの用事伺いがありました。
その際は興信所の調査と偽って切り抜けたものの、逆に居座る免罪符を手に入れたことで、切り上げるきっかけを失ってもいる状況。
まさにエンドレスな苦行の真っただ中にありました。
これがもし単独の任務なら精神を病みかねないよね・・・。
この日の二人も、もはやモチベーションなど皆無。惰性に惰性を重ねてただその場にいるだけの状態でした。
さらに追い打ちを掛けるのが、カイジの語っていた地の利。
つまり団地では堂々と昇降口前に停められない以上、少し離れた道路上から見渡す格好となります。
となれば・・・住民たちの動線は31号棟の横に走っている主要道路が中心であることにも自ずと気付きます。

カイジの実家へ続く昇降口は素通り
それもその筈、31号棟だけでも昇降口は4か所、さらに奥には32,33号棟が隣接しています。
つまり1/4×1/3=1/12の確率ですから、注視してもほぼほぼハズレ。
この徒労感が甚だしい行為を続けていては、次第に警戒が弛緩し、不審者へのセンサーも鈍り始めるのも仕方ない。
そもそも交代制の彼らが把握しているのは、与えられたカイジとその母親の写真のみ。
この住人の住居はこの昇降口の先、という判断すら付かないのです。
もはや、見張りというより殆ど傍観者。
となれば必然、この怪しげな人物が現れても・・・

おいおい露骨かつ堂々とやって来たぞ・・・!( ̄▽ ̄;)
ただ、二人としては角を曲がっても、まだ確率は1/12。
警戒するには足りません。
彼らがようやく本気で注視するのは、問題の昇降口へ向かった瞬間。

青ざめる二人ですが、こうなれば踊り場から見える情報に頼るほかにありません。
1階と2階の踊り場での姿は確認。
問題は、302号室へと向かう3階の踊り場に現れるかどうか・・・?

いや、冷静に考えたらカイジは公式で178cm設定。
これが北斗の拳なら、ケンシロウにおまえのような婆さんがいるかと言われかねないレベルでギリギリの仮装ですよ。
ただ、彼らにとっては見逃した場合の責任を取りたくないのが実情であるはず。半ば怪しいと知りつつも、ミスを犯していない可能性に自然と縋ってしまうのかもしれません。
ですから、決して絶対とは言えないその判断材料にも盲信してしまう。
つまり、このチェックを潜り抜けるのは簡単。

ここさえ通過してしまえば、後は全てが外から死角。
必然、目的の部屋へはあっさりと到着することに・・・!

カイジが高校を出て3年、プラス作中で描かれた2年、合わせて5年ぶりの帰郷。
遂に母親と再会する時が来ました・・・!
それにしても自信満々に見えたカイジの作戦は予想以上に大胆、というより粗いものでしたね(;'∀')
見張り役の注意力次第、あるいはこの棟全員の資料が渡っていた場合でも一瞬で破綻していた。
とはいえ見張りが弛緩するに至る構造的・精神的なロジックは説得力のある物でしたね。
他に気の利いた方法も思い付きませんし、結果的に成功したのでこれ以上突っつく必要も無い。
次回からは福本先生が得意とする閉鎖空間での攻防に突入します。
週刊ヤングマガジン№47(2018/11/05号)より。